かぐわしきは 君の…
   〜香りと温みと、低められた声と。


   “汝、右のみならず…” (おまけ)

      *もっともっと妙な方向へ突っ走ってる掌話です。
       それでもいいという剛毅な方のみ、お読み下さいませ。




まるで程よく熟れた水蜜桃のよに、仄かに赤みの差した頬。
普段が陶器のような深みのある乳白色なだけに、
妙に婀娜っぽくも つやめいて見えるところが罪深い。
かすかな身動きにも耐え切れないか、
それはさらさらとした絹糸のような深色の髪が、
真砂のように抗いも利かぬまま、
そのやさしい肩からすべり落ちてゆく儚さよ。
小さき者への慈愛を惜しみなくこぼす、嫋やかな指先も今は、

 「…………ん、あ、ゃ…。///////」

ひくりと震えてそのまま、
わずかな手掛かり、くんと掴み絞めては妖冶にもがくばかり。
それだけでは足らぬか、その嫋やかな身ごと きゅうとすくめると、
こらえの利かぬまま、掠れた声を絶え絶えにこぼす彼であり。
見下ろせる頬や耳朶が緋色に染まり、
はむと あらためて食いしばられて、
瑞々しい果肉のような口許も、今はどこか痛々しい。
向こうという横を向いたままなお顔の、
恐らくは双眸にも、罪な潤みが浮いているに違いなく。

 「痛い?」

そんなつもりは毛頭なくて、それでなくとも器用とは言えない自分だし、
何だったら誰か呼ぼうかと言いかかったイエスのお膝を、
ゆるゆるとかぶりを振った 流し髪のブッダの手が捕まえて制す。

 「痛くはないんだ、本当に。」
 「でも…。」

それじゃあどうして、我慢強い君が声なんか出すのと問えば。
あのね、と。細い声になり、
ますますのこと頬を真っ赤にした彼が言うには、

 「イエスったら、遠慮しいしい触るから、
  それが余計に擽ったくて…。////////」

 「そうは言うけど。」

いつぞやの天部殿のお言いようじゃあないが、
ここのところは、天の国でも世話を焼かれるばかりの側でいたものだから。
こういったこと、自分への手当てでさえ中途半端だったの、

 「さっきの今なんだから、
  ブッダにもようよう判っているでしょうに。//////」

ふくよかでつやつやしたお肌も
今はその内へ緋を含んでのこと一層になまめかしい。
そんな うなじやお耳を見下ろし、
こちらも何故だか頬を染めて言いつのる神の和子様へ、

 「でも…さっき確かに掠めたんだし。」

たわわにあふれて二人の回りをも埋めている、
深色のつややかな髪の中にて、
ちょっぴりしょぼりと縮こめられた肩が、まあまあ何とも可憐で愛らしい。

 “ううう、ずるいよぉ。//////”

最初は冗談半分に、その実 照れ隠しもあってのこと、

 『じゃあ今度はわたしがしてあげる』と、

言い出したのは確かにイエスじゃああったれど。
何言ってるかな自分のお耳もこの有り様でと、
軽妙に突っ込まれて終しまい…となるはずが、

 『いいの?』

はにゃと無邪気に微笑ったブッダ様だった辺りから、
何だか雲行きが怪しくて。
それもまた、彼の側からの照れ隠しかと思いきや、

 『今日ね、自分でもいじってたんだけど。』

奥のほうでかさこそと小さな気配がするのがどうにも取れなくてと、
それは他愛なく言って下さったものだから。
あああ、しまった、完遂派としての気になるゲージ優先モードかぁと、
何だかよく判らない解析をしたイエスだったとも気づかぬまま。
よろしくお願いしますと、
ちょみっと箍が外れ気味には違いなかった流し髪のブッダ様、
それは気安く、座り直していたヨシュア様のお膝に頭を預けたものだから。

  ここで突き放せるほど、わたしツッコミ力ありません、と

これこそ立派なお仕置きに違いないとばかり、
プラスティックの筒型容器に詰まった綿棒、
おずおずと1本取り出すと、
それはそれは慎重にお掃除に取り掛かったのが、小半時前のこと。
掃除の必要なんてないほどに、お顔と同じ白くて綺麗な耳なのに、

 『………あっ。』

途中途中で、悩ましいお声が聞かれるようになり、

 『あ…んん、そこ、そ、今 引っ掛かった、あ…。/////////』
 『……ブッダ、ちょっと落ち着かせてくれないかな。//////』

  あああこのままだと血を見るかも知れません。
  そんな、乱暴なことを君がするはずがっ。
  いやいやわたしの聖痕があちこち開きそうで…という 一休み中。

どうやら…他は苦行で鍛えたものの、
ここだけは擽ったがりのツボだらけだったらしいブッダ様。
まあ、鍛えようがないって言やあ ない場所じゃあありますが、
それ以上に問題だったのが、

 「だから、あのあの。/////////」

横を向いたまま、ちらりと、イエスのお顔を見上げて来ると、

 「この身になってからは誰かに触ってもらったことなんてなし、
  自分でも気がつかなかったんだもの。/////////」

自分で触る分には平気だけれど、他人が触ると擽ったいってアレですね。
こうと言えば何でもないことなのに、

 「イエス相手だから、えと、
  ちょっとくらい乱れてもいいかな、って。////////」

これもまた、
無理から我慢しなくてもいいかな…と言いたかったらしいのでしょうけれど、
ややもすると何とも頼りない印象がする、
深藍髪を降ろしたお姿のブッダさまが、もじもじと口にするものだから。
しかもしかも、
それは やわやわな力を込めてのこと、
枕になってた御子様のお膝をきゅうと握ったりするものだから。

  ……ええ、ええ、そこは弱き者のためのお膝ですとも、と

胸元ずぎゅんと撃ち抜かれ、

 「…判った。小さいのが取れなかったのが気になってるんだね?」

うん頑張るよと、
イエス様が墓穴を掘ってしまうのも
これまた惚れた弱みというものだろか。

 「ん…。//////
  そう、そっち側の、
  んあっ、そう、そこを………っっ。/////////」

あああんvvと、身を縮めては妖冶に悶絶しておいでの愛しき人を前にして。

 「……。////////」

このままだと、聖痕が開いてのこと、
わざわざ呼ばずとも
破壊天使が勝手に飛んで来るモードに入るかもしれないなぁと、
こそり思ったヨシュア様だったことは、皆様、どうかご内密に……。




  *ブッダ様が異様なほど色っぽく照れたのは、
   自分がついつい上げる声が、
   お年寄りがお風呂に浸かる際の
   “あ"〜〜〜〜極楽極楽vv”みたいだと
   勝手に思っているかららしいです。

   ほんに困った天然さんだこと……。(笑)


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